子犬・子猫科

生後間もない子犬・子猫は、環境の変化や感染症に弱く、また、毎日あげる食事の量などにも特別な配慮が必要です。

ちょっと食欲がなくなったり、嘔吐・下痢が続くと、低血糖を起こし死に至る危険があります。

お家に迎えたばかりのわんちゃん・ねこちゃんにそのような異変が起こったら、すみやかに動物病院を受診する必要があります。

 

以下では、子犬・子猫に多い病気の検査・治療・予防等を解説しています。

犬パルボウイルス感染症

致死率が非常に高い感染症です。

子犬は全国各地から八戸市内にやってきますので、毎年散発的に発生が見られ、いつどこで発症した患者と接触するかわかりません。

唾液や糞便等に由来する、極めて少量のウイルスが体内に入っただけで、感染が起こってしまいます。

 

感染したウイルスが体内で増殖すると、次第に食欲不振、嘔吐・下痢・血便などがおこります。

症状が進行すると、食欲廃絶に陥り、脱水、低血糖、低蛋白・低カリウム血症などから急激に衰弱していきます。

最終的には貧血、血液凝固障害、ショック等により多臓器不全を併発してしまいます。

予防について

子犬にワクチンを接種することで発症を予防できます。

45日齢を迎えた子犬は、通常ペットショップやブリーダーさんが1回目のワクチン接種を受けるさせることが多いです。

確実な予防のためには、それからさらに3〜4週おきに、計3回のワクチン接種が必要になります。近年ワクチンを接種していても発症するケースが出ていますので注意が必要です。

 

特にお家に迎えたばかり子犬の元気食欲が無くなった場合は、必ず病院を受診するようにします。

意識朦朧としてふらついているような状態では、低血糖が強く疑われます。

他にも、尿量が少ない、飲水量が少ない、ややご飯を食べない、吐き気を催している、などの症状があったらすぐに動物病院を受診しましょう。診断は糞便検査で行います。

治療について

軽症例では外来での皮下点滴(1日2回数日)ですむこともありますが、重症の場合は入院での静脈点滴や輸血が必要になります。

抗ウイルス薬の内服・インターフェロンの投与などを併用することもあります。

栄養状態が良く、ワクチンをしっかり接種している子犬は軽症になります。

重症の場合はその半数程度が治療しても亡くなってしまいます。予防が大変重要です。

ケンネルコフ(犬伝染性呼吸器症候群)

犬舎(ケンネル)で起こる咳(cough:コフ)を特徴とする呼吸器感染症を総称してケンネルコフと言います。

ペットショップ等、飼育頭数が多い施設において頻繁に起こります。

単一の病原体でおこるとは限らず、ウイルス(パラインフルゼンザウイルス)や細菌(ボルデテラ菌)などの混合感染により発生することが多いと言われています。

 

症状は2、3日で自然に治る軽症なものから、1〜2ヶ月に渡って頑固な咳やくしゃみを続ける場合もあり、重症例では肺炎まで進行し死亡することがあります。

結膜炎(角膜炎、潰瘍)・鼻炎(くしゃみ)・発熱に伴う元気食欲減退等も見られます。

 

診断は年齢と咳の症状を参考にします。

多くの患者において、最終的な予後は良好ですが、咳が長期間続くケースや、痰や鼻水による呼吸困難を呈するケースは注意が必要です。

重症例では食欲が廃絶し、呼吸困難とともに低血糖を併発することがあります。

 

短期間で自然に症状が治まり治療を要さないものから、抗菌剤や咳止めを使用するものまであります。

症状が比較的強い場合は細菌感染(ボルデテラ)を考慮して抗菌剤を使用します。

治療に反応しない咳の場合は、鼻汁などから細菌培養・抗菌剤感受性試験を行うことがあります。

気道に粘液が絡んで呼吸が辛そうな場合は去痰剤、頑固な咳により気道の損傷が激しい場合は鎮咳薬を慎重に使用します。

呼吸困難をきたす場合は酸素室にて入院治療となります。

コクシジウム症(犬・猫)

消化管に寄生した原虫により、腸の粘膜が損傷を受ける感染症です。

発症した患者は、泥状から水様の激しい下痢を起こします。

幼若な動物は免疫が未熟であるため、発症しやすく、栄養不良等の問題も起こしやすくなります。

一度感染を耐過し、コクシジウムに対する免疫のできた成犬には、ほとんど発症しません。

 

診断では、糞便検査にて、原虫の一形態であるオーシストを検出します。

※ 下痢があるときは、なるべく新鮮な便をできるだけ多くお持ちください。
※ 乾燥した便では検出できない寄生虫もありますので、ビニール袋等に入れてご提出ください。

 

治療は抗コクシジウム薬を1回のみ投与することで実施できます。

概ね予後は良好ですが、成長期に達するまでは再発することもありますので注意が必要です。

下痢の再発や体重の低下などに気をつけましょう。

 

皮膚糸状菌症(犬・猫)

いわゆる水虫です。皮膚に感染する真菌(カビ)による皮膚炎を起こします。

子犬・子猫は、まだ免疫ができていないため、悪化しやすいので注意が必要です。

発症すると斑状の脱毛・かさぶたが認められ、放置すると次第に全身に広がっていきます。

 

抗菌剤やかゆみ止め(ステロイド)の治療のみを実施している場合に、なかなかよくならずに病気が判明する場合もあります。

 

診断はテープで角質層を貼り付け、顕微鏡でカビ胞子の観察をしたり、糸状菌培養を行い確定します。

治療は、薬浴と外用薬を併用して行います。予後は良好です。一度感染した患者には免疫ができるため、再発することは少ないようです。

 

 

また、人にも感染するので、患者を触った後は必ず手洗いをして、カビの胞子を洗い流します。治療前に使用していたペット用具は、洗浄するか、それが難しければ廃棄することを考慮します。

皮膚糸状菌症による脱毛
皮膚糸状菌症による脱毛
皮膚糸状菌の胞子
皮膚糸状菌の胞子

回虫症(犬・猫)


消化管の寄生虫です。目で見えるほどの大きさで、素麺のような外観をしており、時折糞便と一緒に出てきて飼い主さんを大変驚かせます。少数寄生では症状を起こしませんが、大量に寄生すると下痢・栄養不良を起こし、患者が痩せてきます。まれに腸閉塞を起こすこともあります。

 

診断は糞便検査で行います。回虫が腸の中で産卵した卵を、顕微鏡で検出します。必ずしも下痢だったり、痩せていたりするわけではないので、拾ったばかりの猫では特に検査したほうが良いでしょう。

 

治療は駆虫薬の内服です。10日おきに2回から3回の服用をさせます。

 

感染した犬猫の糞を介して、回虫卵が体内に入って感染しますので、散歩などの外出の際に感染してしまう可能性があります。最近ではフィラリア予防薬に駆虫薬が含まれている場合も多く、定期的な駆虫ができます。

ジアルジア症


ジアルジアという原虫の感染により引き起こされる疾患です。粘液状の下痢と栄養障害を引き起こします。食欲はあるのに太らない、痩せている、下痢はしているが検査で何も見つからないときに隠れた感染がある場合があります。慢性例で診断がなかなか下せず、原虫にたいする治療が遅れると、重度の栄養不良や低血糖をきたし、稀ですが致死的になることもあります。

 

顕微鏡による糞便検査では検出率が低いため、なかなか発見されない消化管内原虫です。その場合は検査キットによる抗原検査をするか、試験的に数日の内服を実施してみます。

 

幼少期の下のようなゼリー状の便が続く場合、ご飯は食べるのに痩せている場合は、ご相談ください。※検便をご希望の際は、できるだけ新鮮な便を、できるだけ多く、ビニール等に入れて乾燥しないようにして、当院までお持ちください。特に本症を疑うケースでは下痢の中でも粘液状(ゼリー状)の部分に原虫が見つかることが多いため、この部分を検査に含めると検出率が上がります。

 

 

治療は、数日の内服で行います。一度免疫ができ、体が成熟すると、再感染することはあまりないようですが、幼い時期は再発が珍しくありません。治療後も下痢や体重増加の遅延などに注意します。

ジアルジアによるゼリー状の便(粘膜便)
ジアルジアによるゼリー状の便(粘膜便)
ジアルジア虫体
ジアルジア虫体

トリコモナス症(犬・猫)


 トリコモナス原虫による下痢・栄養不良をきたす疾患です。ジアルジア同様検出率が低いため、発見が遅れる傾向があります。また、一部のトリコモナスは抗原虫薬に耐性を持っており、通常の薬剤では治療が難しくなります(特に猫)。

 

診断は便の顕微鏡観察ですが、ジアルジアと同様に検出率が低く、また、抗原検査がありませんので、診断的治療として抗原虫薬を投与することもあります。

※検便をご希望の際は、できるだけ新鮮な便を、できるだけ多く、ビニール等に入れて乾燥しないようにして、当院までお持ちください。特に本症を疑うケースでは下痢の中でも粘液状(ゼリー状)の部分に原虫が見つかることが多いため、この部分を検査に含めると検出率が上がります。

 

治療は内服を使用します。効果がなければ薬を変更します。特に猫のトリコモナス症の場合、通常使われる抗原虫薬(メトロ二ダゾール)には耐性であると報告されています。メトロ二ダゾール耐性の原虫を治療する際は別の薬剤(チニダゾール)を使用することができます(要相談)。

 

猫の場合、年齢を重ねるとともに免疫が成熟すると症状が治まることが多いようです(1歳から1歳半ころまで)。診断がついている場合は、症状に応じて適宜投薬しながら、免疫の成熟を待ちます。

 

他の疾病(食物アレルギーなど)やストレス等によりトリコモナス症が悪化していることがあります。その場合はトリコモナス症だけでなく、その病気の治療も必要です。

 

毛包虫症(主に犬)


毛穴に潜んで毛包炎を起こす、皮膚の寄生虫です。免疫力の未熟な子犬で時折起こります。全身の毛が抜け始め、皮膚が赤くなって異変に気づきます。

 

診断は、毛を数本抜き、毛根部に潜んでいる毛包虫を顕微鏡で確認して行います。

 

治療は外用薬や内服で行います。予後は概ね良好ですが、免疫能の異常のある患者で重症化することがあります。特に成犬になってからの毛包虫症は、免疫機能等に異常があると考えられており、子犬のケースとは別に考えます。

 

症状が全身に波及すると、全身的に毛が薄くなってしまうことがあります。治療が奏功すると、換毛期を終えるころまでに再び発毛して生え揃います。

 

 

犬の毛包虫
犬の毛包虫

 

  • 糞線虫症

比較的稀な消化管の寄生虫です。下痢の症状が激しく、慢性的に続き、とくに血便をおこします。糞便検査での検出が難しく、治療が遅れることが多いです。

 

診断は便の顕微鏡観察で行います。なかなか検出できないので、診断的に治療薬を投与することもあります。

 

治療は内服薬です。予後は良好です。

 

  • 疥癬虫症

皮膚の激しいかゆみを引き起こす、ダニによる皮膚の寄生虫疾患です。ダニ(疥癬虫)は角質にトンネルを掘ってそこで生活します。重度の感染では元気食欲の低下を起こします。アレルギー性皮膚炎と症状が似ていますが、ステロイドを使用すると、症状がひどくなってしまいます。耳に感染するタイプと全身の皮膚に感染するタイプがあります。

 

診断は耳垢または皮膚の表面を削ったものを顕微鏡観察することで行います。検査で見つからないことが多いため、疑いがある場合は試験的に駆虫薬を投与することがあります。

 

治療は外用剤または内服です。予後は良好ですが、数回治療を続けないと再発することがあります。また、多頭飼いの場合は、みんな同時に治療する必要があります。

 

  • ツメダニ症

比較的まれな犬の外部寄生虫で、毛や体表にフケが生じたように見えますが、顕微鏡で見るとツメダニやその卵が確認できます。単なるフケ症とまちがい、気付いた頃には大量に発生していることがあります。

 

診断は顕微鏡での観察です。

 

治療は2週おきに数回の外用薬が必要ですが、予後は良好です。

 

  • ノミ感染症

野良猫に多く感染していますが、ペットショップ等ではあまり見かけません。屋外に外出する猫は外猫から感染する場合が有ります。犬も感染することがあります。

 

感染すると腰にノミの糞が認められます。虫体は体毛に隠れるので、パッと見ただけでは見つかりません。

 

治療は外用薬・内服等です。野良猫と接触する機会の多い犬猫は、月一回の予防薬を利用できます。

 

  • 猫のヘモバルトネラ症(猫伝染性貧血)

赤血球に寄生するヘモバルトネラ・フェリスという原虫(マイコプラズマの一種)により、貧血を起こす病気です。野良猫同士の喧嘩、ノミダニによる吸血により伝染すると考えられています。

 

血液塗抹を顕微鏡観察して診断します。

治療により完全に駆虫することはできないとされていますが、症状を一旦抑えると、生涯再発しないことが多いようです。

赤血球の表面に小さな黒い粒(原虫)がたくさん付着しています。

赤血球の表面に小さな黒い粒(原虫)がたくさん付着しています。

マラセチア皮膚炎

マラセチアという酵母菌による皮膚感染症です。フケが多くなったり、脱毛したりします。

セロハンテープで体表のフケをとり、顕微鏡で観察することで見つかることがあります。

軽症では抗真菌シャンプーによる薬浴、重症では内服薬を併用して治療します。

黒くて丸いのが、マラセチア菌です。

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